昨今はPC性能が向上したこともあり、
80年代~90年代では考えられないほど
恵まれた制作環境がソフトウェア上で実現できるようになった。

懐古厨といえばそうかもしれないが、
昔は庶民の録音媒体と言えばもっぱら
カセットテープが主流だった。
全てがアナログ機器。
温かみはイコールで劣化の象徴。

デジタル技術が進歩し、
何度聴いても音質劣化しないCDは、
衝撃を持って迎えられた。

1990年代後半に宅録界隈にも激震が走る。
Roland VS-880の登場で、
デジタル録音を家庭でも行えるようになった。

それでも当時から、ある疑問はあった。
「カセットテープの録音の方がガッツがある 」…と。

アナログ機器は処理しきれない入力は、
音が破綻し歪み始めるが、
デジタルピークの耐え難いノイズではなく、
頭が潰れて飽和したコンプレッションであった。

このコンプ感がテープコンプだとか、
サミングの飽和感だとかで
「まとまる」
「ガッツがある」
「温かみ」

なんて言われる感じ。

その昔誰もが憧れ、
恋焦がれたデジタルの
バッキバキにクリーアなサウンドは、
やがて「面白みのない」という評価に
変わっていく。

視覚的な例を1つ上げるとするなら
超高精細なデジタルカメラの1枚と
フィルムカメラのややボケたような1枚

味があるのは後者だ。

勿論デジタルの高精細さは
武器に違いない。

我々は今、随所にアナログ的な質感を
「意図的に」混ぜることで
より味わい深いサウンドが求められている。


卓シミュっていうのは、
いわゆるそーゆー立ち位置でもある。

今更ながら、
その探求の面白みが
私の中でまた芽生えたのである。